
『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』は実話をうたった映画です。
モデルになったフランク・アバグネイル(1948年4月27日 - )は実在します。詐欺罪・偽造罪で禁錮12年の判決を受け、仮出所した人物です。
ただし「どこまでが本当か」を調べると、話が変わってきます。
映画の公開より24年も前に、新聞記者が裏を取ろうとして、取れなかったという経緯があるからです。そして本人も、脚色があったことを認めています。
この記事では、その2つの記録を確認します。
結論:人物は実在するが、武勇伝の裏付けは限られる
| 問い | 記録にあること |
|---|---|
| フランク・アバグネイルは実在するか | 実在する。詐欺罪・偽造罪で禁錮12年、のち仮出所 |
| パイロットや医師になりすましたのは本当か | 1978年に新聞記者が検証したが、証拠は出てこなかった |
| 本人は何と言っているか | 2002年に「脚色や誇張が過ぎた」と述べている |
「全部が嘘だった」という話ではありません。
有罪判決を受けた事実は残っています。裏付けが取れていないのは、映画で描かれた個々の武勇伝のほうです。
映画の原作は、本人の「半自伝」です
ここを押さえておくと、あとの話が分かりやすくなります。
アバグネイルは1980年、半自伝『Catch Me if You Can』を出版しました。共著者はスタン・レディングです。
映画はこの本をもとに作られています。
2002年にスティーヴン・スピルバーグが監督し、レオナルド・ディカプリオがアバグネイル役、トム・ハンクスがそれを追うFBI捜査官役を演じました。
つまり映画の情報源は、本人の語りです。第三者が調べて書いた伝記ではありません。
この構造が、次の話につながります。
1978年、新聞記者が裏を取ろうとして取れなかった
映画の公開は2002年。
その24年前に、すでに検証は行われていました。
記者が当たったのは、彼が「だました」とされる側です。
銀行、学校、病院。そこに残っている通話歴を、彼が名乗ったとされる偽名で照合しました。
出てこなかった、というのが結果です。
この件について、本人はこう述べたと記録されています。
2002年、本人が脚色を認めている
映画が公開された2002年、アバグネイルは自身の会社のウェブサイトでこう述べました。
読みどころは最後の一文です。
「彼は物語を書いたのであって、私の伝記を書いたのではない」
原作者本人が、原作を伝記ではないと位置づけています。
共著者との打ち合わせは4回ほどだったとも述べています。
映画が悪いという話ではありません。
映画は原作をもとに作られ、原作は本人の語りをもとに書かれた。その原作を、本人が「物語」と呼んでいる、という順番です。
では、確かなことは何でしょうか?
記録として残っているのは、次の点です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 生年月日 | 1948年4月27日 |
| 出生地 | ニューヨーク州ウェストチェスター郡ブロンクスビル |
| 罪名 | 詐欺罪・偽造罪 |
| 刑罰 | 禁錮12年 |
| 現況 | 仮出所 |
| 現在の活動 | アバグネイル・アンド・アソシエイツ(防犯コンサルティング) |
有罪判決を受けたこと自体は、争われていません。
疑問が出ているのは、その中身がどれほど映画のとおりだったかという点です。
何をどこまでやったのかを、外部から確かめる材料が乏しい、ということになります。
なお本人は、映画にカメオ出演しています。
ディカプリオを取り押さえるフランス警察官の1人です。
映画のどこが創作で、どこが本当なのか
「実話かどうか」は、作品全体で判定するものではありません。
要素ごとに見ると、答えが分かれます。
トム・ハンクスが演じたFBI捜査官は、実在しません
フランクを追い続ける捜査官カール・ハンラティ。
映画の後半は、ほぼこの2人の関係で進みます。
1人の実在人物ではなく、複数人を1人にまとめた創作の役です。
クリスマスイヴの電話も、あの追跡劇も、相手側は作られた人物だということになります。
一方、弁護士の資格は本当に取っています
作中でフランクはパイロット・医師・弁護士になりすまします。
このうち弁護士については、資格を本当に取得したと記されています。
1978年の検証で証拠が出なかったのは、偽名を使った詐欺のほうです。
すべてが同じ確度で疑われているわけではありません。
| 要素 | 記録にあること |
|---|---|
| 本人の実在・有罪判決 | 記録にある(詐欺罪・偽造罪、禁錮12年) |
| 弁護士資格 | 本当に取得している |
| 偽名を使った各種の詐欺 | 1978年の検証で証拠は出ていない |
| FBI捜査官カール・ハンラティ | 実在しない(複数人物をまとめた創作) |
「実話かどうか」を一言で答えられないのは、要素ごとに確度が違うからです。
アニメや小説と違って、この種の映画は検証できます
この記事で使った材料は、すべて作品の外にあります。
新聞記者の取材、本人のコメント、判決の記録。
物語の中だけで完結する設定と違って、実話をうたう作品は、現実の側から確かめられます。
当サイトでは同じやり方で『ア・フュー・グッドメン』も調べています(ア・フュー・グッドメンの実話|被害者は死んでいない)。
あちらは1994年の新聞3紙にあたって、映画と実際の事件の相違を出しました。
映画の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 監督 | スティーヴン・スピルバーグ |
| 原作 | フランク・W・アバグネイル/スタン・レディング |
| 出演 | レオナルド・ディカプリオ、トム・ハンクス |
| 音楽 | ジョン・ウィリアムズ |
| 撮影 | ヤヌス・カミンスキー |
| 公開 | アメリカ 2002年12月25日/日本 2003年3月21日 |
| 上映時間 | 140分 |
| 日本の興行収入 | 29億円(日本映画製作者連盟) |
よくある質問
キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャンは実話ですか?
モデルは実在の人物で、詐欺罪・偽造罪の有罪判決も記録にあります。
ただし映画で描かれる個々の武勇伝については、1978年に新聞記者が検証して証拠が出ず、本人も2002年に脚色を認めています。「実在の人物をもとにした物語」と考えるのが正確です。
モデルになった人物は誰ですか?
フランク・ウィリアム・アバグネイル・ジュニア。1948年4月27日、ニューヨーク州生まれです。
現在はアバグネイル・アンド・アソシエイツという防犯コンサルティングの会社を営んでいます。
トム・ハンクスが演じた捜査官は実在しますか?
実在しません。
カール・ハンラティは、フランクを追い、また更生の手を差し伸べた複数の人物をモデルにした創作の役です。
弁護士になったのは本当ですか?
資格については本当に取得したと記されています。
1978年の検証で証拠が出なかったのは、偽名を使った詐欺のほうです。要素によって確度が違います。
本人は映画に出ていますか?
出ています。
ディカプリオを取り押さえるフランス警察官の1人としてカメオ出演しています。
原作の本はありますか?
1980年に出版された半自伝『Catch Me if You Can』です。共著者はスタン・レディングで、邦訳は『世界をだました男』(新潮文庫)として出ています。
なお本人はこの本について「彼は物語を書いたのであって、私の伝記を書いたのではない」と述べています。
この記事は、映画の内容と、モデルになった人物についての記録を突き合わせたものです。
人物の経歴・検証の経緯・本人のコメントは、出典にあたって確認し、引用は原文のまま載せています。
本記事は特定の人物を非難する目的で書いたものではなく、「実話をうたう作品をどこまで実話として読めるか」を確かめたものです。

